ウナギの研究活動
現在、国内外のウナギの養殖は、すべて天然のシラスウナギ(透明で体長5~6cmの稚魚)を捕獲して行なわれていますが、近年シラスウナギの漁獲量は大幅に減少しています。また、ウナギの養殖事業が盛んな台湾などでも同様の傾向にあり、資源の枯渇や、魚価の高騰、供給の不安定化などの問題を引き起こしています。
今後研究を進めることで、将来おいしい鰻丼や蒲焼を多くの皆様に安定的にお届けし、日本独自の食文化を守るお役に立ちたいと考えています。
主な活動結果
静岡県水産試験場調査船
「駿河丸」
自然界でのウナギの生態の解明調査
ウナギは、黒く細長い独特の外観とヌルッとした手触りや、お馴染みの蒲焼、「土用の丑」の習慣など、古くから日本人にとって最も身近な魚のひとつです。海で生まれたウナギは、シラスウナギと呼ばれる稚魚になって川を上り、成長した後に川を下って、海で産卵をします。川を上った後の姿は良く知られていますが、一方で、産卵やシラスウナギに成長するまでの海での生態は分からないことが多く、長い間"謎" と言われてきました。
産卵後孵化したウナギの幼生は、レプトケファルスと呼ばれていますが、これまでに台湾の南海域や、沖縄、フィリピン沖など太平洋西側海域の広い範囲で発見され、現在では、最も幼いレプトケファルスがマリアナ諸島の西側で採捕されたことから、産卵場はその周辺海域といわれています。
当社では、1997年から2000年にかけて合計3回、マリアナ海域で、東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授(当時)、静岡県水産試験場と共同で調査を行い、全長約4cmのレプトケファルスを10数尾採集し、その体内(腸管内)から、餌として摂食されたプランクトンを見つけるなど、産卵場所や餌に関係する貴重な情報を収集しました。
(写真1)変態中のレプトケ
ファルス
(写真2)シラスウナギ
(体重約0.15g、全長約50mm)
民間企業初の「人工シラスウナギ」の作出に成功
2005年11月、当研究所は、「人工シラスウナギ」の作出に成功しました。独立行政法人水産総合研究センター「養殖研究所」が行った"サメ卵飼育"( 孵化仔魚に与える餌料にサメの卵を使った飼育法)によるもので、国内3例目、民間企業では初の事例です。
写真には、日齢230(写真1)から、日齢233(写真2)へ、わずか4日の間に、レプトケファルスからシラスウナギに変化(変態)した様子が、はっきりと写されています。レプトケファルスは、「"ヤナギ葉"幼生」と呼ばれていますが、水中に漂う姿は、文字通り風にたなびく柳の葉のようです。